モビリティサービスからライフデザインまでJR西日本グループが描く未来
西日本旅客鉄道株式会社 経営戦略本部 経営戦略部長 中畑明浩
取材実施日: 2025年4月10日
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Chapter 1
長期ビジョンとサステナビリティ戦略
Chapter 2
地域共生とまちづくり
Chapter 3
人財戦略とダイバーシティ&インクルージョン
Chapter 4
地球環境への取り組み
Chapter 5
サステナビリティファイナンスの活用
Chapter 6
ESG情報開示方針と投資家との対話
Chapter 7
視聴者へのメッセージ
西日本旅客鉄道株式会社
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2030年度

GHG排出量(Scope1+2・連結)

107万t-CO2(2013年度比50%削減)
2027年度

省エネルギー車両比率

95%
2025年度

PETボトル水平リサイクル提供量

年間50t
2025年度

水使用量(連結売上高当たり原単位)

6.5㎥/百万円以下
2027年度

管理職に占める女性の割合

単体10%・連結10%

会社紹介

西日本旅客鉄道株式会社(JR西日本)は、1987年に国鉄分割民営化により誕生した鉄道事業者で、西日本エリアに広がる広大な鉄道ネットワークを基盤に、地域社会の移動を支え続けています。現在は鉄道事業にとどまらず、物販・飲食、ショッピングセンター、ホテル、不動産など、幅広い事業を展開しており、「地域共生企業」として事業を通じて社会や地域の課題解決にJR西日本グループ一丸となって取り組んでいます。
新型コロナウイルスの影響により、移動を前提としたビジネスは大きな打撃を受け、JR西日本グループもその例外ではありませんでした。しかし、この困難な時期を経て、社会や生活様式が大きく変化したことを踏まえ、同社は自らの存在意義を問い直し、新たな社会価値の創出に向けた変革に取り組んでいます。
こうした変化への対応と未来への指針として、JR西日本グループは、グループ全体のパーパス(存在意義)である「【私たちの志】〜人、まち、社会のつながりを進化させ、心を動かす。未来を動かす。〜」を策定。このパーパスは、若手社員を中心とした社内プロジェクトチームによる議論を経て生まれたものであり、グループ全体の羅針盤として位置づけられています。

ESG/SDGs経営の取り組み方

「私たちの志」の実現に向け、JR西日本グループは2032年を見据えた「長期ビジョン2032」を策定し、その中核にサステナビリティ戦略を据えています。
同ビジョンでは、「安全・安心で人と地球にやさしい交通」「人々が行きかう、いきいきとしたまち」「一人ひとりにやさしく便利で豊かなくらし」「持続可能な社会」の4つのビジョンを掲げています。これらは、交通インフラの安全性・利便性の向上、地域との共生、環境保全、暮らしの質の向上といったESGやSDGsの視点と密接に関係しています。
また、ビジネス全体のポートフォリオを「モビリティサービス分野」と「ライフデザイン分野」の2つに再編し、それぞれの事業領域にサステナビリティの要素を組み込んでいます。たとえば、モビリティサービス分野では鉄道の安全運行やカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを進め、ライフデザイン分野では地域共生やデジタルを活用した快適な暮らしの提案に注力しています。
これらの取り組みは単なる社会貢献ではなく、社会的価値と経済的価値の双方を創出する価値創造ストーリーとして位置づけられており、同社のESG経営の中心的な考え方を体現しています。

環境課題に対する取り組み

JR西日本グループでは、「JR西日本グループ環境基本方針」に基づき、「地球温暖化防止・気候変動対策」「循環型社会構築への貢献」「自然との共生」の3つを柱に、地球環境の保護に取り組んでいます。
気候変動への対応は、同社にとって重要な経営課題と位置づけられています。2050年までにグループ全体のスコープ1・2CO₂排出量ネットゼロをめざし、2030年度までに2013年度比で50%削減という中間目標も掲げています。これを達成するための2つの柱が、省エネルギーの推進と非化石エネルギーへの転換です。
中でも鉄道の運転用電力はグループ全体のエネルギー使用の大半を占めているため、その電力の見直しが重視されています。同社は電力会社と連携し、専用の太陽光発電所を設置。そこから電力を調達する「コーポレートPPA(Power Purchase Agreement)」という仕組みを活用することで、再生可能エネルギーの導入を加速しています。2024年2月には、大阪エリアの代表的な線区である大阪環状線・JRゆめ咲線において100%再エネ由来電力での運行を実現しました。2027年度には、新幹線の約13%、在来線の11%を再エネ電力に切り替える予定です。
また、再開発エリアでも環境配慮を徹底しており、大阪駅周辺の主要施設では100%再エネ由来電力を採用。将来的には水素燃料電池車両やディーゼル列車への次世代バイオディーゼル燃料の導入も視野に入れています。
循環型社会構築への貢献としては、鉄道工事に伴う廃材のリサイクル率90%以上を目標とし、駅で回収されたペットボトルの水平リサイクル、ホテルにおける脱プラスチックや廃油の再利用など、多角的に資源循環を推進しています。
自然との共生の取り組みでは、鉄道橋梁や護岸の工事など河川に影響する工事の際に生態系への影響を最小限に抑えるための措置を講じるほか、大阪駅の再開発では屋上や壁面の緑化など、都市と自然の調和を図る工夫を積極的に取り入れています。
このように、JR西日本は交通インフラの提供者として環境にやさしい社会の実現をリードする役割を担い、持続可能な未来に向けた取り組みを進めています。

社会課題に対する取り組み

JR西日本グループはパーパスである「私たちの志」や「長期ビジョン」の実現に向けた基盤の一つが「価値創造の源泉であるひとづくり」であると考え、人財育成、組織の多様性の強化、ワークエンゲージメントの向上に取り組んでいます。前提条件としての労働法規や人権といった分野でのコンプライアンスの徹底はもとより、人財育成や女性活躍・障がい者雇用をはじめとする多様性の推進の分野でKPIを設定し、積極的な人財戦略に取り組んでいます。
また、JR西日本グループは「地域共生企業」を掲げ、鉄道事業をはじめとする各種サービスを通じて、地域社会との共生を重視してきました。鉄道というインフラは、地域の存在なくしては成り立たないという考えのもと、地域産業の活性化や地域資源の発掘、沿線のまちづくりを進め、誰もが訪れたくなる・住みたくなるまちの創出に取り組んでいます。
まちづくりの具体的な取り組みとしては、拠点駅の再開発や周辺地域との一体的な開発、エリアマネジメントの推進があります。2024年には、JR大阪駅直上に新たな駅ビル「イノゲート大阪」を開業。また、複合施設「JPタワー大阪」にはフラッグシップホテル「THE OSAKA STATION HOTEL」を開業するなど、大阪駅周辺の人の流れと街の魅力を大きく変えるプロジェクトを実施してきました。
広島では、路面電車が建物内部に乗り入れるという先進的な設計が注目を集めている新駅ビルを建設しており、新たなショッピングセンター「minamoa」や「ホテルグランヴィア広島サウスゲート」を開業しています。三ノ宮でも大型再開発が予定されており、都市の再構築を通じた地域活性化に大きく寄与しています。
また、岡山県北部を舞台に開催した「森の芸術祭 晴れの国・岡山」では、アートを通じて地域の魅力を発信し、多くの来訪者を呼び込むことで地域経済の活性化に貢献。自治体と連携し、「便利で住みよいまち」「働きたいまち」の実現に向けたプロジェクトも各地で展開されています。
暮らしの質の向上に向けた取り組みでは、グループの移動サービスアプリ「WESTER(ウェスター)」を中心としたデジタル戦略を推進。グループでばらばらだったIDとポイントを統合し、個別のお客様に対する1to1マーケティングやサービス提案を可能とする仕組みを整備しています。
さらに、第二種資金移動業者として登録し、新たな決済サービス「Wesmo!(ウェスモ)」を開始。個人向けの利便性はもちろん、法人向けにも資金決済やキャッシュフローの改善に役立つソリューションを提供し、国内でも類を見ない先進的な取り組みをおこなっています。

ガバナンス課題に対する取組の事例

JR西日本グループは、社外取締役を含む取締役会を設置し、実効性評価を通じて機能向上に努めています。​また、独立社外取締役が過半数を占める人事報酬諮問委員会を設置し、取締役の選任や報酬の透明性を確保しています。​
内部統制システムは長期ビジョン実現の基盤と位置づけられており、実効性の高い仕組みを構築するとともに、ガバナンス推進本部を設け、リスクマネジメントやコンプライアンスのグループ全体での推進を図っています。​さらに、ESG課題への対応やサステナビリティの推進もガバナンスの一環として重視し、経営層を中心に全社的な推進体制を構築しています。
また、デジタル化の進展に伴い、データガバナンスの強化にも注力しています。データを効率的かつ安全に共有、活用するためにグループ全体でデータガバナンス体制を構築し、データ取引の「利活用促進」と「安全性確保」の両立をめざしています。
このような取り組みを通じて信頼される経営の実現に向けた着実なガバナンス体制の強化を図っています。
西日本旅客鉄道株式会社
会社概要
本社住所 〒530-8341 大阪市北区芝田二丁目4番24号
代表者名 代表取締役社長 倉坂 昇治
創業 1987年4月1日
社員数 44,366人(連結)
24,300人(単体)
業界名 陸運業(鉄道・バス)
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